こんにちは!GRASPANCの三浦です。

今回は、値下げの与える影響について一緒に見ていきたいと思います。

皆さんは普段販売している商品、サービスを値下げすることはありますか?

安易に値下げするとどういうことになるのか…が今回の1つのテーマとなります。

1.値下げをしてもよい状況とは?

値下げが利益に与える影響を知るために、前回の記事で取り上げた例をここでも取り上げたいと思います。(前回の記事はコチラ

<例>固定費が月に180,000円、1つ20,000円の商品(変動費が1つ6,000円)を販売している

この例で100個売った場合の利益はどうなるでしょうか?

(20,000円で100個売った場合の利益)

20,000円×100個―180,000円(固定費)-100個×6,000円(変動費)=122万円

となります。

では、上記の例において販売価格を2割引きにして16,000円で販売したとします。

この場合の利益は……

(16,000円で100個売った場合の利益)

16,000円×100個―180,000円(固定費)-100個×6,000円(変動費)=82万円

上記となり、利益も同じく40万円下がることになります。

これは当たり前ですよね。単価が下がり、それと比例して売上が下がっているのですから、利益も同じように下がることになります。

このように、「値下げをする前とした後で、その商品が完売した場合、利益がどれだけ変わるのか」ということをしっかりと試算したうえで値下げをする場合は、値下げをしても問題はありません。

例えば、「このまま在庫として抱えていても廃棄になるだけ。廃棄になれば利益はゼロとなってしまうから、仕入れ額と同じだけくらいは利益が出るように値下げしよう」といった場合などです。

2.値下げを避けたい状況とは?

では、「避けるべき値下げ」とはどういう状況でしょうか?

これは「価格競争に巻き込まれた値下げ」や「安売りして販売数量をアップさせよう!」と「安易に」考えた値下げです。

では、上記と視点を変えて今度は、「値下げをして、値下げ前と同じ利益を得るにはプラスで何個売ればよいか」ということを考えてみます。

よくある勘違いが、「20%値下げしたんだから、20%売る数が上がればトントンになる」という勘違いです。上記の例でいうと、100個から120個に売る数が上がればトントンということですね。

では、計算してみましょう。下記の方程式となります。

16,000円×●個―180,000円(固定費)-●個×6,000円(変動費)=122万円(利益)
●個=140個

上記となり、120個ではなく、140個売る必要があることがわかりますね。値下げ前から考えると、40個も(1.4倍も!)多く売る必要があるということです。しかもこのプラス40個というのは「値下げ前と利益がトントンになる」のがプラス40個ということです。

ちなみに売上高で考えると、値下げ前は「20,000円×100個=200万円」、値下げ後は「16,000円×100個=160万円」で、値下げ前の売上高とトントンにするには、

16,000円×●個=200万円

●個=125個となり「25個アップでいいんだ!」という結果になります。

でも大事なのは売上よりも利益ですよね。

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、売上げではなく利益で考えた方が販売個数をアップしなければいけないのは、変動費を考慮するからです。変動費は販売個数と比例して高くなる支出なので、利益で考えると、売上高よりも多く販売しなければいけないということになります。

上記の例の通り、値下げをして利益を値下げ前以上に確保することは、なかなか難しいことがわかるかと思います。

3.値下げをする条件とは?

これまで見てきた通り、値下げをして値下げ前以上に「利益」を得ることはなかなか難しいです。それでも値下げを検討したい場合は、どうすればよいのでしょうか?

まず、戦略的に値下げをする場合に、大前提として抑えておきたいのは、「利益」で試算・分析するということです。

上記の売上と利益で比較してみた通り、売上で試算した場合と利益で試算した場合では、目標とする販売個数に大幅な差が生まれてしまいます。

重要なのは「利益」であるはずなので、利益で試算・分析する必要があります。

2つ目のポイントは、「値下げすることで爆発的に販売個数がアップする」という確証を得る、ということです。

上記で見た通り、値下げをして値下げ前以上の利益を確保するにはかなりの数販売する必要があります。さまざまな状況を分析し、爆発的な販売数アップを見込めるとなった場合でないと、利益は下がってしまうでしょう。

そして3つ目のポイントは、「値下げをする商品の変動費が安い」ということです。

上記で見た「売上と利益の差」は変動費が原因でした。これは、「変動費が高い商品を値下げした場合、それだけ販売個数もアップしなければいけない」ということを意味します。

上記の例で、条件を変動費だけ変えて見てみましょう。変動費を6000円から8000円に変えてみます。

<値下げ前に100個販売した際の利益>

20,000円×100個―180,000円(固定費)-100個×8,000円(変動費)=102万円

<値下げ後に値下げ前と同じ利益を出すために必要な個数>

16,000円×●個―180,000円(固定費)-●個×8,000円(変動費)=102万円(利益)
●個=150個

上記となります。

変動費6,000円のときはプラス40個が必要だったのに対し、変動費が8,000円と変動費が高くなった場合はプラス50個必要になったことがわかるかと思います。

上記3つを考慮し、しっかりと試算・分析をして、「●●円値下げしたら●●個販売個数が上がる。なぜなら、■■■■■■だからだ。そしてこの商品の変動費は●●円と低いから、●●個販売個数が上がれば、利益が●●円上がる。だから値下げをしよう」と戦略的に考えている場合は値下げをしてもよいでしょう。

管理会計については一旦これで終わりにしたいと思います。

収支管理を戦略的に行い、目標を定めて、利益をアップしていきましょう!